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2008年09月25日

「伊藤家の食卓」 滋賀・豊郷町・日本料理

滋賀県豊郷町に「伊藤忠商事」の創始者・伊藤忠兵衛さんの生家がある。
そこが「伊藤忠兵衛記念館」として一般公開されている。

今年は初代・伊藤忠兵衛生誕150周年ということで、
この記念館で4回イベントが催されている。
5月は「近江商人から商社へ」という主題での講演。
7月は「伊藤家に西洋音楽が入ってきた」とSPレコードを蓄音機で聞くイベント。
11月には女優の竹下景子さんが四代目との対談です。

9月は「伊藤家の食卓」と題して、当時の伊藤家の食事を参考にしながら
滋賀県の食生活を礎として今に蘇らせた食事会です。

総合プロデューサーは立川直樹さん。今回のイベント担当は門上です。
このイベントの話を聞いたとき、
すぐに「木乃婦」の高橋拓児さんにお願いしようと思いました。

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当日は午前中から「木乃婦」の料理人さんが高橋さん以下5名、
仲居さんが5名という態勢で仕込み開始です。

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座敷を清掃し、お膳を並べ、資料も配付です。

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厨房もガス台など「木乃婦」さんの持ち込みで、スタッフフル回転で仕込み。

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催事は午後2時から開始です。
伊藤忠兵衛さんの4代目・伊藤勲さんの挨拶に始まり、
立川さんと僕が解説し、まずは高橋拓児さんが献立について解説です。
期待が高まってゆくのがよくわかります。

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先付けが二品
マスカットと八幡こんにゃくの白和え。

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八幡こんにゃくは近江八幡の特産品。
酸化第二鉄で赤いこんにゃく。
それを季節のマスカットとあえたもの。

加えて、冷製 泥亀汁。

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泥亀汁もこの地の郷土料理。ゴマを煎ってつぶし辛味噌と白粥でのばし、
なすびを入れる冷や汁のこと。
ゴマをすりつぶしたのが泥に見え、なすびが亀に見えることからのネーミング。

しかし、高橋さんは、ゴマにだしを利かせ、味の少ない胡麻豆腐を岩に見立て、
その上にかのこに切れ目を入れたなすびをおき、
溶き芥子で亀の頭を描くというアレンジを施したのです。
細かく切った大葉は藻のイメージです。

椀物は鮒椀。

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これは琵琶湖の名産・鮒寿司を使った椀物です。
椀種には薄く切った鮒寿司をなんとオブラートで巻いたもの。
だしは丸(すっぽん)です。焼いた白ネギがいい仕事をします。
そのまま飲むと丸と生姜の味が利いています。
オブラートを破ると
一気に塩味とコクが強くなり旨さを二段階楽しめる椀物となりました。

八寸です。
鯖寿司、栗、銀杏、子持ち鮎。

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滋賀県は京都と東を結ぶ要所でもあり、街道が多い。
東海道、中山道、北国街道、若狭街道など。
そのひとつ若狭街道、そこには鯖寿司があります。
それと季節の栗、銀杏。
そして琵琶湖の鮎という組み合わせです。

蒸物。

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琵琶湖産 天然鰻の茶碗蒸し 丸仕立て。
天然鰻も琵琶湖の特産です。それを使い丸仕立ての茶碗蒸し。

最後のご飯です。
近江牛のすき焼き丼。

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近江牛は江戸時代から養生薬として食されていました。
伊藤家でもすき焼はご馳走として「一と六」の付く日には
従業員と一緒にすき焼きを食べたという記録が残っています。

それを高橋さんは、近江牛のフィレ肉を炭火で焼き、
ご飯に牛肉の味わいを付けすき焼き味に。それを丼の中で一緒にする技です。
「すき焼きですから玉子も付けておきました」と。流石です。

しじみ汁と漬け物。

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しじみは琵琶湖特産だったのですが、今回は宍道湖のしじみを使いました。
漬け物も伊藤家には漬け物小屋があり、大きな樽が残っていました。

締めの水物は
冷やし丁稚羊羹のちまきです。丁稚羊羹も近江の特産。

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そのまま出すのではなく、琥珀羹で挟み込んだ逸品です。

どの料理も驚くほど美味で、高橋拓児さんの智恵と技術の結果です。
参加者はもちろんのこと、関係者も大喜びです。
実際に会場で一緒に食べていると、
参加者の顔がほころんでゆくのが分かるのです。

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食は、伝統があるからこそ、革新を生み出すことができる。
それを実感したイベントでした。

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伊藤忠兵衛記念館
滋賀県犬上郡豊郷町大字八目128-1
0749-35-2001

門上武司食研究所サイトに

9/05 付、
 ☆『海外通信』Torino 通信 Vol.12
  全イタリアを覆うローコストブーム
公開しました。↓

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www.kadokami.com/

その他、
 ☆「名店の賄い」
   第四回 「ショコラティエ なかたに」

 ☆『マスターソムリエ岡昌治の「心に残る今月の一本」
  Vol.7「Ch. Lagrange ’01 (シャトー・ラグランジュ)」

 ☆「京都・名酒館 主人 瀧本洋一の『旨酒』」
  Vol.4「野飲の醍醐味」

 ☆今月の「学会」レポート
  2008年4月度「第64回 パトゥ」

も公開中。↓

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www.kadokami.com/

投稿者 geode : 07:03