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2007年08月03日

「木乃婦」     京都・新町     和食

この季節は鱧である。どこの料理店に行っても鱧が出る。
ならば「鱧尽くしで頼んでみましょう」と予約のときにお願いしておいたのを、すっかり忘れていたのです。
食べ進むにつれ、先輩の音楽家と「今日は鱧が続くね」などと話していました。「そうです。こちらからリクエストをだしたんです」と。

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「木乃婦」は、京都でも屈指の仕出し屋さんです。法事などの需要も多い店なのですが、三代目の高橋拓児さんが、東京の「吉兆」から修業を終え帰ってきてから少しずつ料理が変わり始めたのです。シニアソムリエの資格を持ち、ワインコースなども作ったのです。とにかく研究熱心。海外との交流も多く、フランス人シェフとの交流では香りに着目するなど、従前の日本料理の枠にとらわれない発想の持ち主。でも古典の研究も怠らないという料理人でもあります。

前菜というか八寸から。

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普通はトロのにぎりが入るのですが、鱧の寿司、ごり、青梅、ほうずきなど。
鱧の寿司は、ふんわりとした食感を生かしながら寿司として見事に成立。青梅の甘さと酸味のバランスも素晴らしい。

鱧の薄造り

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これはショックです。まず目に飛び込んでくる美しさ。骨切りするのではなく、薄く引いて開ける。鱧の骨の形状を熟知すると同時に技術の勝負。薄いながらも鱧の味わいはたっぷりです。

鱧、瓜、アワビ、ウニに柑橘系のジュレ。

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このジュレ。とろみと酸味と旨みがすごい。柚子、すだち、レモン、米酢に昆布だしのジュレ、そこにカツオ。火入れすると柑橘の香りが飛んでしまう。ほのかな甘みは米酢からでした。

鱧の木屋町焼き

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この木屋町焼きには、先輩も「生涯でいちばんの鱧かもしれない」と。同意見です。木屋町焼きとは昔にあった調理法。木屋町は鴨川と高瀬川の間にあるので、素材を合わせて焼く調理法のコトなのです。今回は鱧。片栗で合わせ、串を打ち炭で焼くそうです。皮目はパリッと、しかし身はしっとりと驚く食感と旨みが詰まっています。ホントやられました。聞けば表面は900度、中心は68度で焼き上げるとこの状態になるとのことでした。

鱧しゃぶ

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鱧の鍋です。松茸が入り、だしにその香りがうつる。鱧は言葉通りしゃぶしゃぶと二三回だしにくぐらせるだけで充分。

ごはんは鮎どんぶり

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さすがに「これだけ鱧がつづくと変えた方がいいでしょう」と鮎ごはんに。この鮎の焼き方も素晴らしい。

デザートはココナッツのアイスクリームに桃、マスカット、巨峰、そこに桃のピューレ。

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香りの立たせ方。甘みの生かし方など消化を助けてくれるのです。

興奮の食事でした。
料理は、科学、伝統、先進などあらゆる要素がうまく絡み合い、前進してゆくのだなということをしみじみ感じたのでした。

木乃婦
京都市下京区新町通仏光寺下ル岩戸山町416
075-352-0001

投稿者 geode : 02:06