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2008年02月02日
「FAT DUCK」 英国・ロンドン モダン英国料理
今回の旅、前半のハイライトです。
ロンドンから約一時間。ちいさなカントリーサイドに、本当に古い建物。カントリーハウスが建ち並ぶ一画に「FAT DUCK」。
ここのシンボルマーク・フォーク&ナイフが印です。
目立つことなく、ひっそりと客を待っているという印象を受けました。
店内の天井は低く、まさにカントリーハウスの趣です。心がゆったりと、落ち着いてきました。
まずはオリーブを摘みながら乾杯。これが素晴らしい旨さなんです。
TASTING MENU AND WINEにしました。
さあ、「FAT DUCK」の始まりです。
テーブルサイドにメートルが現れ、液体窒素を使ったメニュー。
これはアラン・シャペルへのオマージュとなっていました。マイナス196℃液体窒素で卵白のムースを作り、その中にライムジュースとウォッカを入れる。うえには抹茶の粉末がかかる。
「気をつけてもって、一口で食べてください」と。食べると一瞬にして口のなかで溶け、ライムの香りが広がる。ライムは食欲を促し、茶やウォッカの中に含まれる分子の働き、が口内の洗浄との説明です。出だしからやられました。
バターも無塩と有塩。
続いて2色のゼリー。「オレンジとビーツのゼリー。オレンジから食べてください」と。
下の黄色から食べると、苦味が。おやっと思って褐色を食べると甘い。つまり黄色にはイエロービーツ、褐色がブラッドオレンジ。色と味わいは逆。視覚のマジックです。オレンジが黄色という固定観念を見事に裏切るのです。
次は牡蠣料理です。
牡蠣はちゃんと包丁が入り、ホースラディッシュ、パッションフルーツ、ラベンダーの香り。チュイルもラベンダーの香りが漂う。これはストレートに美味しいのです。
次がガスパッチョ。
色が紫色です。真ん中のアイスクリームはポメリーのマスタードのアイスクリームで、ソースは赤キャベツ。ガスパッチョといえばトマトが必と考えるんですが、歴史を繙くともとはトマトを使っていなかったという。これも既成概念を疑い、研究を重ねた結果です。
さて、小さな器と木の台。
そして奥にグリーンの台があり、
そこから一枚フィルムを取りだし口に入れる。オークの香りが口の中に充満です。それもややスモーキー。
器の中には
下にグリンピースのピュレ、鶉のゼリー、ラングスティーヌのクリーム、フォアグラのパルフェが、それを下からすくってたべる。
続いて横のトリュフのトーストを食べる。
すると奥の台に水を注ぐと、再びオークの香り。
オーク、トリュフ、鶉、など土や森の香りを感じながら食べるというマジックです。どれも旨さがちゃんとあるのです。
ホワイトチョコレートとキャビアの料理。帆立のタルタル。
ホワイトチョコレートとキャビア、この二つが何故同居するのか。じつは分子レベルでこの二つを繋ぐアミンという存在があるという。違和感なくすっと落ち着いてくれる。
フォアグラのローストです。
このフォアグラが傑作です。脂分が適度に抜けしっとりした食感。アーモンドのクリーム、アマレットのゼリー。カモミールの香りなどが渾然一体となっているのです。冷凍のフォアグラを使った逸品です。
つぎは「SOUND OF THE SEA」。
まず貝殻が届く。中にI PODが、イヤフォンをすると海の音が流れてくるのです。
その気分になって隣のプレート。
まさに海岸です。鰻の稚魚、ウニ、ハマグリ、牡蠣などなど。泡は海草の泡です。砂に見立てのはタピオカの結晶です。これはまさに海岸で遊んでいる気分を想起させる料理で、磯の香りを感じるとともに、どこかノスタルジックな思い描くのです。
次は、
皿一面にピンクグレープフルーツ。バニラのクリームにアーティチョーク。リコリスのゼリーで包まれたサーモン。
このサーモンの火入れが素晴らしく、しっとりした仕上がりです。
鳩の料理です。
ソースが血のソースなのですが内臓とクリームが入りすこぶる付きのおいしさ。この鳩に対する火の入れ方も完璧で、旨みを逃すことなく完成させるテクニックも流石です。おいしさの追求という命題もきちんとクリア。
そしてアールグレイのお茶です。
「そのまま角度を変えずに真っ直ぐ飲んでください」と。最初は熱いのと冷たいのが上下と予想したのですが、なんとこれは左右にそれが分かれていたのです。唇の真ん中で分かれるのには驚きです。
コーン入りのアイスクリーム。
これは液体窒素を使った料理の魁へのオマージュ。19世紀半ばに活躍した、アグネス・マーシャルという女性がその人で、彼女に敬意を表したメニューです。
小さな筒に入った料理は、真ん中の棒をつまみ中の粉をつけると、ラムネの味わい。松の香りも含まれ、野を駆けめぐっている思い出が蘇って来るのです。
すると次のデザート。
ブラックカラントのシャーベットにマンゴー。そこのちゃんと松の香りが含まれて繋がりをもっているのです。
さあ、そこから本格的なデザートですが、サービスマンは「グッドモーニング」といって朝食をサービスするような趣きです。
紙のケースが。
これはシリアルが入ったスタンダードな大きさです。
中には根菜類のチップ。
そこに甘いミルク。
まるでシリアルモードですが、デザートです。
そこにメートルが現れ。プレゼンテーションです。
卵の殻を割ってパンに。もちろん卵ではありません。そこに液体窒素を注ぎ、アイスクリームが。それを上にのせてサーブです。
フレンチトーストにベーコンチップ、スクラブルエッグとなるのです。味わいは甘く、しかし香りはベーコンをしっかり感じるなど見事です。これは心に残る料理をサービスしたいという思いから生まれたもの。朝ご飯を家族で食べるというシチュエーションを演出したのです。となりは紅茶のゼリーです。
そろそろ大団円。チョコレートワインです。
1660年代、チョコレートが伝来した時代はボルドー、ポートワイン、砂糖、チョコレートを混ぜて飲んでいたとか。その現代版ということです。つまりルーツを探り、それをモダンにという手法です。
次はグミ。WHISK(E)Y。
ここにスコットランドの地図があり、それぞれウイスキーの産地があり、そのグミなんです。それを味わう水はスペースサイドの仕込み水という徹底です。上からGLENLIVET, OBAN, HIGHLAND PARK,
LAPHROAIG,そして飛んでJACK DANIELS。それぞれきちんとそのウイスキーの味。素晴らしいデザートです。
アールグレイ。
オレンジとニンジンのキャンディ。マンダリンのエアーチョコレート、スミレのタルトにアップルパイのキャラメルです。
食後は厨房とラボを見学しました。思ったよりコンパクトな厨房と実験室のようなラボ。まさに化学と料理の融合が行われていたのです。
しかし、料理は生きるために不可欠、それを楽しみ、つぎに考えるというテーマというか哲学を持ち込んだ。これは一つの衝撃で、料理の新たな方向性でもあるのです。
なんともドラマチックでエキサイティングな体験でした。また食べに行きたいと思う料理でもあります。
1/30付、
☆『海外通信』Torino通信 Vol.5
「チョコレートブーム」
公開しました。↓
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投稿者 geode : 08:27