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2020年10月30日
「洋食おがた」 京都・柳馬場御池・洋食
「ほどほどの食事」ができない男が6名集まった。
目の前のカウンターに鹿児島県鹿屋市「ふくどめ小牧場」から届いた
サドルバック種の骨つき豚が置かれた。
男たちは目を輝かせながら、骨つき豚を凝視する。
そこからこの日の食事は始まった。
恋豆腐。
濃さと甘さは格別である。
続くはしめ鯖。
「ここは洋食屋ですよね?!」と健啖家が呟く。
ヤイトカツオ。
その脂分はマグロかと思う人もいるほど。
身の崩れかたもカツオではない感じ。
アジのフライ。
時間の経過とともにどんどん火が入ってゆく。
半生状態の香りと味わいにうっとり。
「これは初めての感じ」だと同じ健啖家。
カマスのフリット。
これは衝撃であった。
コロモの薄さとサクッと感の次に味わうカマスのコク。
これまでのカマスの料理とは異なる逸品である。
サワラのフライ。
今や「洋食おがた」の定番とも言われるメニュー。
火入れ状態の素晴らしさから生まれるふんわりしっかりした味。
いつも舌の記憶を塗り替えてゆく。
このサワラである。
サドルバックの豚足のガレット。
圧倒的なゼラチン質の粘りとコク。
もう嬉しくて小躍りしたくなった。
オーナーシェフ・緒方さんの世界にぐんぐん踏み込んでゆく。
そしてメインのサドルバックのローストとカツレツ。
う〜ん、これはどちらがいいという問題ではなく、好みに任せるしかない。
骨つきのサドルバックの凄みを味わうのであった。
カウンターに座っていると、別の客席に運ばれる料理が目の前を通り過ぎる。
これは「ほどほど」を知らない男には酷である。
ハンバーグ。
「ハンバーグは外せないと思っていたんです」とチーズ作りの職人。
肉肉しいが、上品な味わい。
カレーライス。
洋食屋の定番でようやく男たちの胃袋は満足感を得たようだ。
洋食のある種の方向性を見た感じだ。
「洋食おがた」
京都市中京区柳馬場押小路上ル等持寺町32-1
075-223-2230
投稿者 geode : 10:12
2020年10月28日
「ラボンヌターシュ」 大阪・西天満・フランス料理
赤ピーマンのムース。
これを初めて意識したのは、パリの「ラムブロアジー」。
ボージュ広場に移転した直後のこと。
ベルナール・パコーさんのスペシャリテであり、
以前は三田「コートドール」の斉須政雄さんと共に作ったものだが、
遡れば「ヴィヴォロワ」というレストランが原点のようである。
その流れを継承する「ラボンヌターシュ」のシェフが作る先付けは赤ピーマンのムース。
トマトのクーリと赤ピーマンが織りなす傑作といえる。
様々な思い出を浮かべながら食べる。
ノルウェーサーモンの燻製。
ねっとりした歯ざわりとかすかな甘味がやってくる。
どこか懐かしい味わい。
モンサンミッシェルのムール貝。
スープ仕立てである。
もう少し濃さがあるかと思っていたが、流れるように軽やか。
牛ほほ肉の赤ワイン煮込み。
付け合わせは人参のピュレ。
直球ストライクゾーンに決まる料理だ。
赤ワイン煮込みの真骨頂は、牛肉にワインの風味が漂うこと。
しっかりした仕事である。
クレームブリュレ。
硬さが嬉しい。
エスプレッソでしめる。
安定感のある料理。
たまにはチューニングのためにも食べたい献立である。
「ラボンヌターシュ」
大阪市北区西天満4-1-8
06-6312-1777
投稿者 geode : 10:36
2020年10月27日
「Pizzeria Cinq(ピッツェリアサンク)」 大阪・西天満・ピッツェリア
ラジオ番組の収録後、最近はイタリア料理店で食事をすることが多い。
相棒の西林初秋さんと、その日の収録や次回のテーマなどについて話しながら食べるのである。
この日は西天満で初めて訪れるピッツェリア。
「Pizzeria Cinq(ピッツェリアサンク)」。
すっきりとした店先に期待が膨らむ。
サラダを食べる。
野菜の力とドレッシングの塩梅が素敵。
ポテトフライ。
揚げたて、少しぽってりした感じ。
塩のきかせかたが優しい。
サンマと大根おろしのマリナーラ。
最適な組み合わせはピッツェリアでのクリエーション。
完成度の高さが麗しい。
マルゲリータは必須である。
トマトの酸味、モッツァレラのコク。
生地のサクッとした食感と味わいのキレがいい。
リピートしたくなる味わい。
マダムがパティシエで、焼き菓子などの販売もされている。
この日は20時を過ぎてからの訪問であった。
次回はもう少し早い時間に訪れたいと思う。
「Pizzeria Cinq(ピッツェリアサンク)」
大阪市北区西天満3-7-17
06-6363-1139
投稿者 geode : 10:27
2020年10月26日
「中国菜 香味」 大阪・西天満・中華料理
このところ中国料理を食べる割合が増えている。
大阪の西天満は、中国料理店の数が多い。
その中の一軒「中国菜 香味」は、地味だが味わいの精度の高さは見事だ。
前菜がずらりと現れた。
茄子は醤油、酢と砂糖などで味付け。
生湯葉は冬夏草と塩
クラゲの甘酢はゴマとアンチョビ これは印象深い
ハチノスはセロリと塩、山椒オイル
よだれどり
生麩の醤油煮は氷砂糖を使う
鳴門金時にプチトマト
ツルムラサキのスープはピーナッツオイル
8種類の前菜を食べながら、中国料理の深みなどについて考える。
それぞれ典型的な料理だが、味付けに個性が見え興味深い。
フカヒレは、この季節ならではの献立。
上海蟹のあんのコクが加わることで、味の幅が広がる。
海老の塩漬け卵にマコモダケ。
塩分とねっとりした食感が生み出すインパクトは鮮烈だ。
海老が一段階ランクアップしたように感じる。
丸鶏の料理、かつては乞食鶏と言われたがいまは富貴鶏と呼ばれる。
中に豚肉や中国の漬物を詰め蓮の葉で包み、蒸し上げる。
数日前に僕が誕生日を迎えていたのでご主人・矢谷幸生さんから
ありがたいサプライズである。
鶏ははふんわりとかつ味わいがしっかり。
豚肉の脂分、甘味、漬物の酸味が鶏に染み込んでいる。
包み蒸し上げることで生まれた味わいだ。
白きくらげ、百合根、上湯など。
なんとも優しい味。鶏からの流れがいい感じである。
宜賓燃麺(イービンランミェン)
四川式の油そば
麺を油で和えた麺である。
デザートは三不粘をリクエストした。
卵、砂糖、ラード、水溶き片栗粉のみをひたすら鍋の中で調理する。
三不粘
皿につかない、箸につかない、歯につかない
ということからこの名前がついた。
カスタードのような味といった方がいいのだろうか。
なかなか出会うことのできない献立である。
豆花。
小菓子で締めくくる。
なんとも感銘を受ける献立であったことか。
定期的に訪れたくなる味わい。
「中国菜 香味」
大阪市北区西天満3-6-15
06-6364-2980
投稿者 geode : 10:46
2020年10月23日
「料理屋 しん谷」 京都・中書島・日本料理
京阪中書島駅から歩いて3分ほどのところにある日本料理店。
以前、「センプリチェ」という人気のイタリア料理店があったところだ。
古い町屋をうまくリノベーションした店内。
入り口を入ると、左にテーブル、右手にカウンターがある。
コースもあるが、単品で注文することもできるのが嬉しい。
清酒を飲む人には江戸切子の酒杯。これは美しい。
魅力的な料理が並んだ献立が楽しい。
先付けは、黒イチジクとアワビ。
豊潤な甘味をたたえたイチジクには胡麻クリーム。
アワビには肝ソース。
相性の良さは王道だが、これで気持ちを掴まれる。
明石の伝助穴子。
炙りで供される。弾力があり食感から発する甘味。
わさびをたっぷりつけても脂分のおかげで香りだけが残る。
すっぽんの小鍋仕立て。
店主が以前仕事をしていた「花錦戸」という店ではすっぽんを良く使う。
その技が生きている。
スープの味わいの奥行きの深さとすっぽんのゼラチン質。
素敵な一品だ。
土佐のカツオの藁焼き。
藁の香りがふんわりと香る。
すっぽんの出汁入り卵焼き。
すっぽんのコクが楽しい。
松茸と穴子の天ぷら。
季節ならではの味わい。
黒毛和牛テールの味噌煮込み。
骨からスルッとほぐれるほどよく煮込まれたテール。
味噌のコクが気持ちを豊かにする。
これは次回も必至の献立だ。
ヤンバル豚ソーセージ炭火焼。
プチっと溢れる味。
栗と銀杏のご飯。
ほくほくと秋の味わい。
シャインマスカットの大福。
梨にセトマスカット。
居心地の良い日本料理店である。
「料理屋 しん谷」
京都市伏見区表町582-1
075-748-7111
投稿者 geode : 10:02
2020年10月22日
「熙怡」 京都・室町仏光寺・イタリア料理
「熙怡」と書いて「きい」と読む。
喜ぶとか囲むという意味があるそうだ。
昨年の春、中書島で人気であった「センプリチェ」が四条烏丸に移転し、店名も変えたのである。
チャンスを逸したまま時が過ぎ、ようやく訪れることができた。
オーナーシェフの西山哲平さんの表情は輝いている。
新たなステージで、やりたいことがやることができる環境が整ったという感じである。
メニューは素材が書いてあるだけ。
それを見ながら想像を膨らます。
松茸。
ヒネドリ、あこや貝、いりこでとったスープで松茸を食べる。
歯を入れると甘味が生まれ、スープの香りとともに楽しむ。
伊勢海老。
直前に打ったタリアテッレ。
伊勢海老の殻と身とトマト、花穂紫蘇となる。
パスタのしなやかさに海老のコク。
最初からインパクトありだ。
雲子 キャビア。
雲子はカダイフで包まれフライに。
そこにラトビアのニコライキャビア。塩味とコクが加わり完成だ。
栗 チーズ。小さいピザ。
ゴルゴンゾーラなどシェーブルのチーズと栗。
弾ける旨みとチーズの酸味などが新たな味わいを告げる。
鴨 トリュフ。
七谷鴨はタレのつけ焼き。
ローストしたアーモンド、トリュフのジュースなど。
ソースというかスープはイクラ。これには衝撃を覚えた。
野菜。
このメニューは「センプリチェ」時代からのスペシャリテ。
サツマイモのソース、そしてセロリの甘酢のソルべ。
やはり感動は大きい。
天然キノコ。
アミタケ、ほうき茸、舞茸など
香りの高さは格別である。
フエダイ。
ピルピルというスペイン特有のソース。
フエダイの旨みの強さに驚きながら、発酵した生姜など西山さんの技を楽しむ。
パスタ。
トロフィエはトマトとチーズ
タリオリーニはめぬけと舞茸。
締めパスタでぐっと安心感と満足感は増す。
デザート。
洋梨のソルベ、卵黄のクリーム、ナッツ
西山さんの世界がより際立ち、それが明確になり、
以前より刺激を感じるようになった。また通いたくなった。
「熙怡」
京都市下京区烏丸通仏光寺西入釘隠町242
090-7098-4392
投稿者 geode : 10:25
2020年10月21日
「仁修楼」 京都・紫竹・中国料理
間もなく開店一周年を迎える中国料理の店「仁修楼」。
カウンター8席、個室6席。14名の食事である。
オーナーシェフの上岡誠さん。
ホテルでの修業が長く、中国にも何度も足を運ぶ。
紹興酒漬けの海老と上海蟹。
この漬け具合が絶妙。食べる時間を考える。
漬かり具合を調整することで、素材の味を生かす。
前菜盛り合わせ。
クラゲやよだれ鶏、胡瓜の甘酢、焼売などが揃う。
一つひとつしっかりした味付け。
それぞれの成り立ちなどを考えながら食べる。
これぞ中国料理だという認識が生まれる。
蒸し鶏
しっとりした食感としなやかな味わい。
食べる時間を想定し、約4時間前に蒸し、
一度も冷蔵庫に入れることなく液体に漬けて常温で味を含ませる。
その仕事が味わいに確実に現れる。
冬瓜の蒸しスープ。
偶然に数日前に誕生日を迎えていたので、
上岡さんが誕生日祝いの文字を彫ってくださった。
冬瓜の中には漢方と言われる食材がたっぷり入る。
すっきりとしてかつコクと滋養を感じる味わい。
気持ちが豊かになってゆく。
鮑の蒸し物。
肝のソースには白ご飯が添えてある。
鮑の香りと食感。
肝のソースの存在とご飯との相性。
さすがの仕事だと思う。
広東風の焼き物はロケットと呼ばれる窯で焼く。
そこに油をかけながら火入れをする。
皮目のパリッと具合と味の浸透さ。
火をどれだけ入れるかの調整が秀逸である。
ふかひれの土鍋。
ふかひれの繊維を感じる。
贅沢な気分になる。
麺料理。
揚げて調理を施した自家製麺の歯触りは衝撃であった。
お菓子。
10月の季節を感じさせる。
コースとしてのメリハリ、味の強弱など非常によく考えられた味わいであった。
「仁修楼」
京都市北区紫竹北栗栖町 2-12
075-366-8843
投稿者 geode : 10:24
2020年10月20日
「秋華」 京都・北白川・中華
中国料理を食べる機会が多い。
大衆中華と呼ぼれるジャンルから四川や広東、北京などの地方料理、
枠にとらわれないヌーベル・シノワなど様々な料理店がある。
「京、静華」から独立を果たした「秋華」。
6名でテーブルを囲んだ。
前菜の盛り合わせ。
推し豆腐、豚トロチャーシュー、よだれ鶏
ピータン、キュウリの甘酢
中国料理の代表的な料理が勢ぞろい。
安心感を味わう。一気に中華の世界へ誘われる。
青菜の塩炒め
このようなシンプルな料理に、店の実力や姿勢が見える。
的確な調理に食べる速度が速くなる。
海老のチリソース。
辛さは比較的抑え気味、半熟卵がいいアクセントとなる。
みやこもち豚の黒酢酢豚
酸味がほどよく、甘味とのバランス良し。
一旦揚げられた豚肉の衣のサクサク感には感動する。
噛むと豚肉の旨みが現れる。
麻婆豆腐
白ご飯が欲しくなる料理。
2種の辛さとコクが特徴。
鶏のピリ辛炒め。
刺激的な辛さと鶏の味わい。
食欲を増進するような献立だ。
チャーハン。
さらりとパラパラ。
すっと胃袋に収まる。
担々麺。
辛味がよく、満足感が満ちてゆく。
杏仁豆腐。
数名で訪れ、色々食べたいと思う。
「秋華」
京都市左京区一乗寺樋ノ口町27 コーポラス禅1F東
075-285-1140
投稿者 geode : 10:40
2020年10月19日
「なにわ翁」 大阪・西天満・蕎麦
新蕎麦の季節がやってきた。
蕎麦屋さんの店頭に「新蕎麦」という文字がおどる。
西天満の「なにわ翁」に久しぶりに訪れた。
新蕎麦の季節だが、店頭の「子持ち鮎のそば」という言葉に惹かれた。
ちょうど数日前に京都の料理屋で子持ちの鮎の塩焼きを食べたばかりであった。
そのほっくりした味わいを思い出しながら、このメニューを注文しようと思ったのだ。
週末の店内、テーブルが埋まり、程よい盛り上がりであった。
その子持ち鮎の蕎麦を頼む。
鮎は煮浸しとも記されていた。
テーブルに届いた。
子持ち鮎がどんと真ん中にいる。
まずは出汁を飲む。
しっかりとした味わいに鮎のコクが溶け込んでいると感じた。
続いて蕎麦をたぐる。
出汁の味をまといながらも蕎麦の香りも生きている。
関西人には、この出汁とのマッチングも大事な要素である。
そして鮎を食べる。
頭をかじる。骨などがほぼ当たることなく、口の中に甘味が広がる。
蕎麦を食べる。鮎を食べる。出汁を飲む。
この繰り返しが快楽につながってゆく。
締めは蕎麦の実だ。
プチっとした食感はありながら出汁の味がいいアクセント。
気持ちも心も豊かになった夕食であった。
「なにわ翁」
大阪市北区西天満4-1-18
06-6361-5457
2020年10月16日
「トラットリア・ニコ」 大阪・南森町・イタリア料理
イタリア好きの友人とかつて同行したことがあるトラットリア。
以前は「トラットリア・シェル」という店名であった。
シチリア料理を標榜する。
まずは「蒜山のリコッタチーズとトマトのカプレーゼ」。
リコッタチーズがほのかに温かい。
トマトの甘味と酸味、塩分の具合、まさに塩梅が的確である。
温かなリコッタチーズのコクにトマトがすっと忍び寄る。
そして一体となった瞬間に生まれる新しい味わいの広がりに、うっとりしてしまった。
「チーズが出来た時の状態でお出ししたかったので、温めています」とのこと。
この一手間がぐっと味をも打ち上げてくれるのである。
スタートからいろいろ聞きたいことが生まれるのは、料理に力があるからなのだ。
続いて勝浦のカジキマグロのパレルモ風パン粉焼き。
パレルモ風とは香草パン粉を厚切りのカジキマグロにつけて焼き上げた料理のこと。
表面は香ばしくサクッとしており、中はふんわり。
口に含んだ時の身のほぐれ具合が見事に功を奏し、
料理としての完成度を高めてくれる。
パスタはシチリア名物「イワシのブカティーニ」。
ブカティーニはロングパスタとショートパスタの
ちょうど間を埋めるぐらいの長さであり、やや太めのパスタ。
弾力のある歯ごたえも特徴の一つだ。
イワシとブカティーニはシチリアの名産。
香草が放つ味わいと香りもパスタに絡む。
地中海の風とたおやかな気性などを感じる一品でもある。
締めは海老とレモンのリゾッット。
海老の赤い色目が視覚的な効果をもたらす。
ふっと香るのはレモンの風味。口に含むとレモンの爽やかな酸味。
そして海老のコクがときおり訪れる。
やはり米の料理は安心感があるのだろうか。
米はイタリアの米ですか?と聞くと
「いえ、日本のヒノヒカリです。日本の水には日本の米がいいようです」
との返事。納得だ。
水だけで調理をし、仕上げにほんのすこしのチーズを加えるとのこと。
レモンは大三島の国産レモン。
穏やかでありながらも、しっかり味わいのあるリゾットである。
デザートもシチリアのカンノーロ。
甘味があると、エスプレッソが活きてくる。
シチリアのレストランで気に入った料理に出会うと、すぐに厨房に飛び込み
レシピを教えてもらうことがほとんどだという。
その成果が、この素敵な味わいを支えていると感じた。
「トラットリア・ニコ」
大阪市北区南森町2-1-18 ジャスティス南森町1F
06-6367-2020
投稿者 geode : 10:06
2020年10月15日
「一碗水」 大阪・堺筋本町・中国料理
「一碗水」のカウンターに腰を下ろすとなぜか背筋が伸びる。
おそらく主人・南茂樹さんが放つオーラが、その要因だと思う。
一見寡黙であるが、こと料理のことになると的確な言葉をつなぐ。
生センマイに青山椒。
おそらく、ここで生センマイを食べるのは初めての経験。
山椒の爽やかさがきいている。
生麩と落花生
生麩は一旦揚げてから味を含ませる。
旬の落花生。金時草の花も添えられていた。
中国風のコロッケ。
海老芋、松茸、牛肉に浮き粉。
松茸の香りはインパクトあり。
豚足。
赤腐乳につけ込んでから焼く。
香りとゼラチン質のマッチングが面白い。
万願寺唐辛子と茄子。
まるで炊き合わせのような感じだ。
魚のスープ。
中にはサイシンという野菜が入る。
魚の出汁と豆腐を混ぜ合わせると白濁しスープになり、
乳化とは異なるさっぱりした味わい。
鰻は香菜と黄ニラで炒める。
野菜と合わさることで、鰻はすっきりとした味わい。
もちろん、鰻の持つ脂分と野菜の青味も見事な相性。
丹波黒鶏と利久栗。
鶏と栗の出会いは想像以上に、お互いを引き立てる。
香茸の香りも効果的だ。
中国パンもいい。
アコウの料理。
3キロ超えの大きなアコウを蒸し揚げる。
そこに黄、赤唐辛子、塩、砂糖に酢を加えたソースをかける。
ほのかな酸味がアコウに寄り添うのである。
炒飯は香り高く、するすると胃袋に収まってゆく。
銀杏のクリームを使ったデザート。
このカウンターで食事をする喜びを噛み締めていた。
「一碗水」
大阪市中央区安土町1-4-5 大阪屋本町ビル 1F
06-6263-5190
投稿者 geode : 10:11
2020年10月14日
「チェンチ」 京都・岡崎・イタリア料理
岡崎の地でレストランを開いて6年だという。
すっかり定着し、安定感があるので10年ぐらい経っているのかと思っていた。
イタリア料理店というより
京都でイタリア料理をベースに新たな料理を食べているという感覚が強い。
まず最初に8種類のハーブが入った液体を飲む。
レモングラス、オレンジピール、ローズヒップ、マリーゴールド
ルイボス、ハイビスカス、ペパーミント、エキナセアである。
ビタミン補給や免疫力アップ、胃袋の活性化などに効果があるとの説明。
気分はスッキリである。
グリッシーニをかじる。
定番のペルシュウとブッラータ
ブッラータの前には落花生を熟成させピュレ状態にしたもの。
この2品で一気に「チェンチ」の世界に馴染んでしまう。
枝豆 白海老 檸檬唐辛子
白海老はフリット
枝豆のソースは青大豆で豆乳プリンを作る。
自家製レモンの唐辛子 マイクロキュウリはピクルスに
酸味とコクと食感と甘さの饗宴だ。
茄子 オクラ トマト 伝助穴子
伝助穴子は炭火で火入れ
万願寺唐辛子は煮浸し トマトは乳酸発酵させピュレ
オクラの花はピクルスと発酵や酸味の使い方が見事である。
とうもろこし 鮎 ハレヤ ハーブ
鮎の分解と再構築 プラスワンの料理
クレープ生地に鮎のペーストを練り込み、中には鮎の身やアマゾンカカオのジャムを含ませる。
上にはミントとディルのヨーグルトに粒コーン。
進化し続ける坂本シェフの姿である。
ひよこ豆とインカの目覚めのコロッケの上に剣先イカ
パプリカのピュレ
バランスのとれた料理である。
蓮根 七谷鴨 山椒
七谷鴨は20日熟成
蓮根のシャキシャキ感と鴨のしっとり感の差異も面白い。
トマト 茄子 秋刀魚 茴香 スパゲッティ
季節感満載のパスタ
ういきょうと秋刀魚のコンビネーションは素敵すぎる。
ゆり根 天然舞茸 原木椎茸 リゾット
これまた季節を象徴する料理であり味わい。
エクレア
ゴマとカカオとパッションフルーツ
無花果 ピスタチオ ビール
桃 生姜 金木犀
バースデーケーキに感激。
坂本シェフの思想がますます料理に反映されたと感じる。
料理をジャンルというより、個人の考えをいかに提供するか。
そんな思いを強くしたディナーであった。
「チェンチ」
京都市左京区聖護院円頓美町44-7
075-708-5307
投稿者 geode : 10:11
2020年10月13日
「大阪とらふぐの会」 大阪・天満・ふぐ
会員制のフグの店である。
会員といっても入会金があるわけではなく、
会員同伴で訪れた人ならよほどのことがない限りは入会資格がある。
初訪問。
緊張感と期待などが入り混じる。
画像はないが皮のポン酢から始まる。
てっさには鱧の肝がつく。
軽やかでかつ味の余韻が長い。
鱧の子の玉じめである。
味の濃さを感じる。
松茸の包み焼き。
開けると甘い香りが一気に広がる。
鱧大福
鱧の身を海苔で巻く。
新しい食感と味わい。
鱧の椀物。
出汁の味にキレがある。
焼きふぐの始まり
身皮(みかわ)と遠江(とおとうみ)
基本は塩と胡椒
フグの風味が高まり、これはクセになると感じた。
ノドとウグイスはタレ焼き
コリっとした食感から弾ける旨みに喉が鳴る。
唐揚げも衣の噛み心地から生まれる充溢感。
仕上げの鍋。
まず鱧とキノコや野菜が登場する。
フグがたっぷり入って加熱された鍋。
そこに鱧と野菜を入れ蓋をして蒸し上げる。
煮ると蒸すの二段階調理である。
鱧、キノコ、フグというように味わいもどんどん変化する。
非常に楽しい。
そして雑炊。
旨みの塊のような味わい。
デザートで締める。
フグを主体にさまざまなアプローチがなされたコース。
これまでとは異なる体験をしたのであった。
「大阪とらふぐの会」
大阪市北区同心1-7-2 大特硝子記念館11F
投稿者 geode : 10:44
2020年10月12日
「美美」 博多・赤坂・コーヒー専門店
「美美」でコーヒーを飲む。
これは福岡では欠かせない行為である。
ネリドリップの楽しみを知った一軒。
閉店した東京の「大坊珈琲店」とともに、
僕がコーヒーに深く関わるきっかけをいただいた店でもある。
数年前にご主人・森光宗男さんは鬼籍に入られたが、
現在は奥様が立派にそのあとを継いでおられる。
ここではヤン二ハラールモカを飲むことが多くなった。
ご主人が最後に淹れてくださったのがこれであった。
その日もマンデリンを飲んだあと、
少し話していると森光さんが「ヤン二ハラールモカいいですよ」と仰ったので、
もう一杯いただいたというわけ。
その時の様子を思い出しながら飲む。
豆の扱い、ネルドリップの持ち方、お湯の注ぎ方などがくっきり浮かんでくる。
コーヒーは生豆ずつ味わいが微妙に異なる。
だからいつも一緒というわけではないが、それは誤差というか許容範囲である。
ふくよかな香りと適度な苦味と酸味のバランスにうっとりしながら
昼下がりの時間が緩やかに過ぎていった。
この店が福岡にあることで安心感がある。
「美美」
福岡市中央区赤坂2-6-27
092-713-6024
投稿者 geode : 10:32
2020年10月 9日
「とりやき八」 福岡・薬院・焼鳥
凛とした佇まい。
コの字型のカウンター。
清潔感満載の「とりやき八」。
鶏は綺麗なケースに入っているのを見た途端に喉がなる。
鶏の迫力が半端ではない。
つくねから始まる。
卵黄の役割が大きく、インパクトあり。
ごまどり。
博多はごまサバが名高いが、その鶏バーション。
胡麻の風味が効いている。
鶏のなめろう。
これも衝撃だ。
人気No.1と言われるカルパッチョ。
さっと炙った鶏の味わいの濃密なこと。
そして焼鳥へと続くのだが、炭火の上に置かれた鉄板。
これは初めて!
職人がしっかり焼いてくれる。
もも肉2種
300日飼育と400日飼育。
弾力と味の濃さには、いささか驚く。
最初から鋭い衝撃。
ささみはふんわりとほぐれてゆく。
山葵で食べる。
砂ずり。
コリっとの後に旨み。
白肝パテは焼いたパンの上に。
ねっとりとコクには僕でも酒が欲しくなる。
とりとろは新鮮な味わい。
ぼんじりはサイズが小さく脂の旨味を感じる。
胸肉には梅肉。
爽やか。
白肝はとろり。
鶏そば。
うっとりと締める。
再訪必至、感動の一軒である。
「とりやき八」
福岡市南区向野2-1-8
092-561-2808
投稿者 geode : 10:23
2020年10月 8日
「東心斎橋やつづか」 大阪・東心斎橋・日本料理
大阪・ミナミの周防町通りにある割烹店。
約束の時間より少し早く到着すると、ご主人がカウンターで甘鯛をさばいていた。
その姿の美しいこと。この日は、この甘鯛を食べたいと思った。
ご主人の甘鯛を凝視する視線にも魅せられた。
この日はカウンターではなく個室であった。
メンバー(3名)が揃い、献立を見ながら料理を決めてゆく。
料理選びも割烹の醍醐味である。
昨今は割烹といってもほとんどがコース仕立てになっているところが多い。
真つぶ貝造り。
貝殻付きで供された。
迫力と真つぶ貝の濃さに箸が進む。
剣先イカ唐揚。
画像からも想像できるようにスティック状である。
味はイカフライのよう。酒飲みの二人は大喜び。
かにとモモ、梨サラダ。
組み合わせの妙が素敵だ。
かにとモモは想像がついたのだが、梨の水分と甘味が見事に寄り添っていた。
新すじこ沖漬け。
皮の柔らかさと味の凝縮感の差異が楽しい。
イカとセロリのかき揚げ。
このコンビネーションにも感動である。
甘鯛の松笠焼き。件の甘鯛である。
鱗がピンと立ち、その香ばしさと身のふんわり具合。
天ぷら3種。
ハマグリ、トウモロコシ、鰻。
ハマグリのジューシーさがいい感じだ。
山形牛のクリとミスジのすき焼き。
すき焼きの甘だれにメレンゲと卵黄。
締めに仲間が蕎麦を注文。
スッキリだ。
僕は合鴨黒胡椒焼きに白ご飯。
これを勝手に丼仕立てに。
白いご飯が進む。
こんなことができるのが割烹の楽しみだ。
気軽な仲間と訪れたい一軒。
「東心斎橋やつづか」
大阪市中央区東心斎橋2-5-29 日宝周防町ビル2F
06-6213-2250
投稿者 geode : 10:43
2020年10月 7日
「白山」 京都・東山七条・日本料理
今年6月開店の、閑静な住宅街に佇む割烹店である。
邸宅を改装し、カウンターは広々として心地が良い。
主人の山城和彦さんは、北海道の「美山荘」や東京銀座の店舗などで腕を振るった料理人。
店名の「白山」は、ハクザン、と読む。
山城さんを反対にするとシロヤマ、それを白山としたわけだ。
ワタリガニ、菊菜、ウニ。
季節感を全面に押し出す真っ当な先付けは安心感を覚える。
圧巻で麗しい八寸。
秋を告げる食材の声が聞こえてくるようだ。
かます、銀杏、紫頭巾にかぼちゃ、鮑などなど
気分が高揚する味わいと盛り付け。
造りは
車海老とクエ。
器とのバランスもよし、味わいの凝縮感が素敵だ。
半生状態の小ぶりの鯖寿司が登場。
これが胃袋をまた刺激してくれる。
椀物は鱧と松茸。
黄金の組み合わせ。だしのキレがスマート。
ぐじにムカゴ。
ぐじの皮目のサクッと感、身の豊かさを味わう。
炊き合わせ
舞茸、焼きなす、加賀蓮根のすり流し、かぶら。
うっとりするような味の含ませ方。
ご飯は豪勢だ。3種あり。
松茸と鱧
鮭
枝豆と栗。
もちろん全て食べる。
鮭にはイクラが乗り、親子丼となる。
それぞれの個性が際立つご飯で、嬉しさが増す。
自家製栗きんとんにパイナップル、梨、シャインマスカット。
抹茶。
優雅な時間が流れる設えと料理であった。
季節を変えて伺いたいと感じている。
「白山」
京都市東山区今熊野北日吉町52-17
075-525-9060
投稿者 geode : 10:50
2020年10月 6日
「熟豚」 京都・山科・とんかつ
店名の「熟豚」からして素敵だ。
気持ちが動く。
移転後、初めての訪問。
鹿児島の「ふくどめ小牧場」のサドルバックという、
いま僕が最も好む豚を扱っていることも、再訪の大きな要因である。
その「サドルバック」のとんかつを食べる。
サドルバックの醍醐味は脂身のさわやかさである。
脂身と書いたように、脂も身のうちだと思っている。
余分な脂分は落とし、旨みを残す。
脂の綺麗さは威厳を保っている。
塩やマスタードなど調味料によって味わいの変化も楽しい。
とんかつの新たな地平が見えてきたように感じる。
コロッケも数種あり。
有機国産ジャガイモと熟成豚のそぼろコロッケ。
そぼろの役割が大きいと思った。ボリュームあり。
豚汁のレベルも高い。
とんかつを中心として様々なチャレンジが見られるのが
食いしん坊の気持ちを刺激してくれる。
「熟豚」
京都市山科区竹鼻西ノ口町57-1
075-595-0295
投稿者 geode : 10:03
2020年10月 5日
「祇園 きだ」 京都・祇園・日本料理
「祇園さゝ木」佐々木浩さんの一番弟子のお店である。
東京出店、富山出店時も常に「祇園 きだ」の木田康夫さんが料理長を務めていた。
つまり信頼がもっともおける料理人ということだ。
「祇園 楽味」の初代料理長ということでも、わかる。
うに、海老、いかに芋のペースト、わさびのジュレ、キャビア。
ビジュアルも含め刺激的な始まりである。
立派な松茸登場。
新銀杏。
素揚げ、温度と香り。
かますにイクラ、海苔。
ほっこりする。
椀物はクエと松茸。
贅沢感溢れる椀であった。
淡路島沼島の鱧、塩とすだちに赤うに。
鱧の新たな食べ方だと感じた。
鱧は骨切りをしてそれを包丁で一体となるように仕上げる。
風味と食感の勝利だ。
五島列島の迷いカツオ 藁で焼き香りをつける
ミンククジラの尾の身は軽くづけ
ワタリガニは豆と合わせる
この時期の迷いカツオの旨さは格別だ。
クジラは香りが秀逸、ワタリガニは甘味が生きる。
鰻はぬか漬けのキュウリと。
鮑の料理。
たっぷりの肝ソースに青ナス。
5時間 火入れをした鮑の完成度の高さ。
残ったソースで素麺となる。
スルスルと胃袋に入ってゆく。
締めのご飯には牛肉のしゃぶしゃぶ。
優雅かつゴージャス感を味わう。
ご飯と牛肉の相性は 麗しい。
デザートは
梨のソースにピオーネとシャインマスカット。
木田さんのしっかりした世界観を感じる楽しい時間であった。
「祇園 きだ」
京都市東山区祇園町南側570-192
075-551-3923
投稿者 geode : 10:41
2020年10月 1日
「京、静華」 京都・岡崎・中国料理
カウンター内の空気感が極めて穏やかに流れてゆく。
空気感とは、見えない音の振動でもあり、
その場にいる人たちの呼吸や鼓動でもある。
それを支配するのが、店主の宮本静雄さん。
料理はチームの仕事である。
横で仕事をする料理人、サーブを担当する人。
ここでは宮本さんの最大の理解者でもあるマダムがそれを担当する。
鶏胸肉
蒸した鶏肉に熱いラー油をかける。
ネギと生姜がソース替わりだ。関東風の仕上げ。
熟成豚肩ロース
甘いのだが上品で、脂があるのに清冽。
田中とうがらしの刺激も心地が良い。
目板カレイ クラゲ 大根
中華風刺身である。
オリーブオイルがきいている。
車海老 新銀杏の香り炒め。
ミント、エシャロット、生姜、ニンニク。
透明感あふれる料理だ。
フカヒレ
ヨシキリザメの胸ビレ
レンコンと6年ものの梅干しの酸味がいい働き。
黒鮑 キヌア
合わせるのはチシャと肝で炒めたキヌア。
この合わせ方はすきがない。
近江牛 茄子
サーロインは塩蒸しで焼く。
少しピリ辛の風味を添える。
浜名湖ドウマン。
この時期に取れる汽水域の蟹は貴重である。
ピーナッツオイルで調味。
鱧 広東白菜
鱧の骨の出汁がポイント。
松茸の香りも贅沢感を添える。
担々麺
この細さなのに食感が素晴らしい。
炒飯
シンプル イズ ベスト。
杏仁豆腐。
忘れられない味と口当たり。
サンザシのゼリー、かぼちゃのココナッツ、ナッツのかりんとう
いつ訪れてもの安定感。
「京、静華」
京都市左京区 岡崎円勝寺町36-3 2F
075-752-8521
投稿者 geode : 10:42